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人事制度構築コンサルティング

一定年齢になれば受給できる老齢年金は本当に必要か

日本人の平均寿命は約40年で10歳上がりました。

1970年 男性69.31歳 女性74.66歳
2009年 男性79.59歳 女性86.44歳

長生きできるようになったということは、素晴らしいことです。一方で、このままでは年金制度が崩壊するということが言われています。その主な原因として、少子高齢化が進み、少ない現役世代では多くの年金受給世代を支えること ができなくなることが挙げられています。

具体的には、20歳以上65歳未満の人口に対する65歳以上の人口は、1970年には11.7%だったのに、2009年には38.5%となりました。いわゆる現役世代2.6人で年金受給世代1人を支えるという計算です。
さらに、2030年には現役世代1.7人で年金受給世代1人を支えることになります。

このように、現役世代の負担が増加していくことが、少子高齢化社会の問題の1つだとされているわけです。

少子高齢化の要因は、出生率が低下したことと、平均寿命が伸びたことの2つです。出生率の低下に歯止めをかけることは可能だと思いますが、上げるのは非常に難しいと思います。平均寿命もまだまだ伸びるでしょうから、少子高齢化の流れは今後も進むでしょう。

そう考えると、年金制度は変更せざるを得ません。どういうふうに変更すればいいかは、私達がどのような社会を望んでいるかによって変わります。

今の年金制度は、「65歳で引退して、年金暮らしで余生を送る社会」を前提としています。もし、私達が今後もそのような社会を望むのであれば、65歳より若い現役世代の負担を増やす以外にありません。

「65歳だとまだまだ元気だから、受給開始年齢を70歳くらいに引き上げればいいのではないか」というのも、根本的な解決にはなりません。数十年後は、今よりさらに平均寿命が伸びるのは間違いないのだから、結局今と同じ議論になるのが明らかです。

私は、そもそも老齢年金自体をなくしてしまった方がいいと考えています。

現在の公的年金制度では、年金を受給するのは、老齢、障害、死亡の際です。このうち、老齢の部分、つまり、たとえ健康でも一定年齢に達したら年金受給権を得るという仕組みををなくしてしまうのです。

もちろん、病気その他の理由で働くことができない方については、現行と同様に年金を支給し、生活を保障する仕組みは必要不可欠です。

このことは、「一定の年齢が来たら引退して、年金暮らしで余生を送る社会」から、「働けるうちは働いて、生涯現役生活を送る社会」へと大きく転換することを表します。

「いや、自分は年をとったら働かずに、悠々自適の生活を送りたい」という人もいるでしょう。それも素晴らしい考えだと思います。

ただ、いつまで働き続けるのかはあくまで個人の考え方に委ねればいいことで、国が画一的に決めることはないと思うのです。年をとったら引退したいと思うなら、個人で年金に加入したりして、備えればいいのです。公的年金制度から老齢部分をなくすことができれば保険料は下げられるはずですから、その分を個人年金に回せば十分可能です。

画一的に一定の年齢が来たら引退することを前提とする社会が望ましいのか、元気で働けるうちは、生涯働き続けることを前提とする社会が望ましいのか。

これは、若い世代が考えないといけない問題です。自分達が老後を迎えたときに、どのような社会になっているのがいいと思うかです。

「まだまだ先のことだからよく分からない」
「官僚や政治家に任せておけばいい」

というわけにはいかないのです。なぜなら、それは自分達に直接関係する問題だから。数十年後に文句を言っても手遅れなのです。

年金制度は複雑で、制度を変えるには移行措置も十分検討しなければなりません。抜本的な年金制度改革ができないのは、現役世代や受給世代など、立場によって対立する利害関係が存在するためです。少なくとも、今までずっと保険料を払ってきて、もうすぐ年金をもらえる人にとっては、現行制度のままの方が望ましいのです。

そのため、仮に年金制度を改革しても、それが適用できるのは、早くても20年か30年先、つまり、今の30代や40代が老後を迎えた時なのです。

だから、私達30代や40代は、将来の年金制度をどうしていくべきか、自分達に関係があることとして、しっかりと考えてみる必要があると思います。

「一定の年齢が来たら引退して、年金暮らしで余生を送る。その代わり、現役時代は高い年金保険料を支払う『高福祉・高負担社会』」
「現役時代にはそれほど高い保険料を支払わなくてよい。その代わり、働けるうちは働いて、生涯現役生活を送る『低福祉・低負担社会』」

貴方は、どちらがいいと思いますか?

社会保険労務士事務所トリプルウィン

代表 樋野 昌法
((当社メルマガ2011年6月1日号コラム「士業のココロ」より転載))


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