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労働契約法の改正にどう対応するべきか2012.08.20

雇用契約が反復更新された結果、トータルの勤続期間が5年を超えている有期労働契約の社員(契約社員、パート社員、アルバイト社員など)が、無期労働契約にしてほしいと言ったら、企業はそれを受け入れなければならないというのが、主な改正内容です。

改正の目的は、「雇止めに対する不安を解消し、働く方が安心して働き続けることができるようにするため」ということですが、経営者の皆様はどう思いますか?

「えっ、5年を超えた有期契約社員は、本人から要望を受けたら無期労働契約に転換しなければならないのか。じゃあ、契約更新は長くても5年までにしておこう。」と思うのではないでしょうか。

企業にとって、正社員のような無期労働契約と、有期労働契約では、大きな違いがあります。解雇が厳しく制限されている現行法では、無期労働契約を締結するということは、長期的に人件費という固定費を抱えることにつながるからです。

それでは、今回の法改正に、企業はどのように対応すべきなのでしょうか。


ポイントは3つです。

1つめは、これまでのような有期労働契約の契約社員、パート社員、アルバイト社員について、入社後5年間は、その後も長期的に雇用してもよい人材かどうかを見極める期間にするということです。

そして、長期的な雇用はできないと判断した社員については、契約を更新しないということです。これまでのように、「有期労働契約のまま、契約更新を重ねた勤続10年のベテラン」のようなパート社員は少なくなります。

「勤続5年経ったら、優秀な社員は無期労働契約に移行する。そうでない社員は契約更新せず、代わりに新人を採用する」ということが一般的になります。

企業がそのような対応をとると、無期労働契約に移行できない契約社員やパート社員、アルバイト社員は、5年以内に転職を繰り返すことになります。

結果として、今回の法改正は労働者にとっても厳しいものになる可能性があります。


そのことを踏まえて、企業が有期労働契約の社員に対して実施すべきことがあります。それが2つめのポイントです。

それは、すべての有期労働契約の社員に対して、きちんとした能力開発プログラムを用意し、能力を高めるということです。

法改正の結果、有期労働契約の社員の中には、どうしても5年以内に辞めてもらわざるを得ない(契約更新をしない)人が出てきます。せめてその社員が退職後、できるだけ次の就職が決まりやすいように、エンプロイヤビリティ(雇用されうる能力)を高められる環境を用意しておくことは、経営者の責務だと思います。

また、有期労働契約の社員が、無期労働契約に移行するに足る人材かどうかを判断する際には、それまでに能力を引き上げる措置を講じておいたほうが、より正確に判断できるはずです。

現在は、研修などの能力開発プログラムは正社員限定で、契約社員やパート、アルバイト社員は対象外という企業が多いのですが、今後は雇用形態に関わらず、全社員に対して能力開発プログラムを用意すべきだと思います。


3つめのポイントは、短時間正社員を活用するための人事制度を整備することです。短時間正社員とは、フルタイムではなくパートタイムで働く無期労働契約の社員のことです。現在は、正社員は無期労働契約かつフルタイム勤務であることが一般的です。

法改正後は、無期労働契約でもパートタイム勤務の社員が出てきます。そして、たとえば週2日はA社、週3日はB社で、いずれも短時間正社員として無期労働契約で働く、というケースが今よりも増えてくるはずです。

そのような働き方をする社員に対して、企業はどのように評価し、処遇していくのか、明確にする必要があります。たとえば、フルタイムの社員に比べて賃金はどうするのか、管理職に登用するのか否か、人事評価はどうするのか、等です。短時間正社員が力を最大限発揮できる環境を整備しなければなりません。


以上の3点が、今回の労働契約法改正にあたって、企業が対応すべきポイントです。


今回の法改正は、企業経営にとって厳しい面があります。

しかし、「有期労働契約の社員にも能力開発プログラムを実施し、勤続5年以内でその後の雇用継続の可否を判断して、短時間正社員のような新たな雇用形態を含めた人材活用を推進する」という流れをつくることによって、経営面でのプラスの効果を生むことができると思います。

社会保険労務士事務所トリプルウィン

代表 樋野 昌法


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