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国民年金の納付率が低下しています。2010年4月〜2011年2月の11ヶ月間実績は過去最低の58.7%になってしまいました。
「どうせ保険料をきちんと払っても将来年金をもらえるとは限らないから」
「生活難で現在のお金に困っているので、将来の年金に回す余裕などない」
というのが年金保険料を納付しない理由として挙げられる主な内容です。
内閣府の「消費動向調査」によると単身世帯・外国人世帯を除く一般世帯の2011年3月末の携帯電話普及率は92.9%ですから、生活難を理由に国民年金の保険料は納付していない世帯でも、携帯電話の料金は払っているというケースが多いと考えられます。
つまり、この背景にあるのは年金に対する不信感です。将来もらえるかどうか分からない年金に対して、貴重なお金を払う気はないということです。
確かに、一定年齢から受給できる「老齢」年金として、現在は65歳から老齢基礎年金が支給されていますが、いずれは受給開始年齢が70歳や75歳に引き上げられることが予想されます。その意味では、将来年金がきちんともらえるかどうか分からないから保険料を払いたくないという気持ちは理解できます。
しかし、国民年金の給付には、老齢基礎年金だけでなく、病気や怪我のために重い障害を負ってしまったときに支給される障害基礎年金や、夫が無くなった時に妻子に対して支給される遺族基礎年金もあります。
私は、老齢基礎年金については、思い切って民間の保険会社に任せてしまって、将来リタイアして年金を受給したいと思っている人だけが任意で加入する仕組みにする方がいいと思っています。誰でも必ず同じ早さで平等に年をとるので、老後の生活については自分で計画が立てられるものだからです。
しかし、障害を負ってしまったり、夫が亡くなってしまったりという不測の事態が発生してしまったときの生活は、国が責任を持って全国民に保障すべきだと思います。
「ライフプランは原則的に一人ひとりの自己責任で組み立てる。ただし、不測の事態で生活が困難になってしまったときは、国が救済する仕組み」
これが、日本の社会保障制度のあり方だと思っています。そういった意味では、現行の年金制度のうち、障害基礎年金や遺族基礎年金こそが、私達が安心して暮らすために欠かせない仕組みだと思います。
ただ、これらの年金は、本来の保険加入期間の3分の1以上保険料を滞納していたり、直近1年間の保険料を滞納していたりする場合には支給されません。
必ずしも保険料滞納だけが原因ではないのですが、本来年金が受給できるほど重い障害を負っているにもかかわらず、年金の受給資格がない「無年金障害者」は、12万人もいると言われています。
万一障害を負ったときに最低限の社会保障すら受けられない「無年金障害者」になってしまう可能性があるということを考えれば、たとえ老齢基礎年金の支給開始年齢が将来引き上げられる可能性が高いとしても、国民年金保険料をきちんと納付した方が安心だと思います。
そうした悲劇を生まないために、できるだけ多くの人に年金制度大切さを伝え、年金保険料をきちんと納めようという気になってもらうことは、社会保険労務士の重要な役割の1つだと思って日々活動しています。
あわせて、破綻寸前で早急な改革が必要な「老齢」年金について、どのような形が望ましいかを皆で考える機会を作っていければと思います。
代表 樋野 昌法
((当社メルマガ2011年6月15日号コラム「士業のココロ」より転載))
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