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コラム

人事制度構築コンサルティング

人事評価が5段階では少ないのか

先日、私が人事評価制度の策定をお手伝いした会社の社長からご質問を頂きました。

内容は、「人事評価の段階を5段階から7段階に増やしてはダメか」というものです。

その会社では、人事制度を策定するときに、人事評価の段階をS、A、B、C、Dの5段階に設定しました。

ところが、運用を開始して、実際に人事評価をしてみると、
「A評価でも、『Sに近いA』と『Bに近いA』があるので、ひとくくりに『A』にするのは違和感がある。そこで、『A』を『A+』と『A−』に、『C』を『C+』と『C−』に分けて、7段階にしたい」

ということでした。

このような要望は、他社でもよくあります。逆に、「5段階だと多すぎるから3段階にしたい」という要望もお聞きしたことがあります。また、「5段階だと評価が真ん中ばかりに集中するから、4段階にしたい」というケースもあります。

「人事評価を何段階にすべきか」という絶対的な答えはないので、企業の抱えている問題を踏まえて決定し、数年経ったらまたそのときの状況に合わせて見直すしかありません。

ただ、最も使いやすいのは5段階評価です。(厳密には、一番下に「解雇相当」レベルの最低評価Eを設ける「形式6段階、実質5段階」なのですが、ややこしくなるのでその詳細は別の機会にご説明致します。)

できれば避けたほうがいいのは、評価の段階を多く設けることです。段階を増やすほど、それぞれの違いが不明確になってしまうからです。

その結果、仮に評価の段階を7段階や9段階などに増やしても、結局ほとんどが真ん中の3つの範囲内、たまにその上下1つを使うぐらいで、実質的には5段階評価と同じになります。

「一応、7段階用意しておいて、実質的な運用は5段階ということなら、何も問題ないのではないか」と思われるかもしれません。

賞与支給額に評価結果による差をつけたくない場合は、確かにそれでも問題ありません。

しかし、「いい評価を取った人には賞与を多く支給したい。逆に悪い評価の人には、賞与を少なくしたい」というふうに、ある程度メリハリを持たせたい場合は、たとえ形式的にでも評価の段階を多くしておくのは避けるべきです。

理由は以下のとおりです。

仮に、ある社員の1回の基本賞与額が50万円だとします。そして、最高評価と最低評価で、それぞれ基本賞与額から30%の増減をつけるように設計するとします。つまり、最高評価を取ったら65万円、最低評価だったら35万円になるということです。

これを5段階評価で設計すると、「S」が65万円、「A」が57.5万円、「B」が50万円、「C」が42.5万円、「D」が35万円になります。

7段階評価で設計すると、「S」が65万円、「A+」が60万円、「A−」が55万円、「B」が50万円、「C+」が45万円、「C−」が40万円、「D」が35万円になります。

5段階でも7段階でも、評価結果の多くは「まあまあ良い」「普通」「やや劣る」のように真ん中3つの範囲に収まります。

それを前提とすると、5段階評価の場合、だいたい賞与額は57.5万円〜42.5万円の差が出ます。一方、7段階評価の場合は55万円〜45万円となり、5段階評価の場合よりもメリハリが小さくなります。

また、真ん中3つの評価を上下に1つ超える「非常に良い」「非常に悪い」までを含めると、5段階評価の場合、賞与額は65万円〜35万円の差が出ます。一方、7段階評価の場合は60万円〜40万円となり、やはり5段階評価の場合よりもメリハリが小さくなります。

以上のように、形式的に7段階用意し、実質的な運用は5段階にするという方法では、結果的に当初計画よりも賞与支給額にメリハリが利かなくなることが多いのです。

そのため、形式的にも実質的にも5段階評価にし、「Sに近いA」は思い切って「S」評価にした方が、メリハリの利いた賞与支給を実現するうえでは望ましいのです。

また、前述のとおり、評価の段階を多くすると、それぞれの違いを認識するのが難しくなるため、5段階ぐらいまでに留めておいた方が、評価者、被評価者ともに運用しやすいものとなります。

もし、5評価では運用しにくいと感じられる場合、単に運用に慣れていないことが原因である可能性があります。

その場合は、人事評価者研修を実施して、評価者全員が制度への理解度を深めるとともに人事評価スキルを向上させることが、解決への近道です。

社会保険労務士事務所トリプルウィン

代表 樋野 昌法


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