TOPページ > コラム
仕事ぶりに見合わず高い賃金を支払っている社員の賃金をどうやって下げればいいかとお悩みの社長は多いと思います。最近お会いした何人かの社長も、皆さんこの問題を感じていらっしゃいました。
仕事ぶりに対して高い賃金を支払うことの問題として、人件費負担が過大になってしまうということが挙げられますが、見落とせないのは、他の社員のモチベーションの低下につながるということです。
他の社員から見ると、「あの人は自分より仕事をしないのに、なぜ給料が高いのか」ということです。往々にして自己評価が甘いだけというケースも多いのですが、それにしてもこういう思いを抱く社員が多いと、社内の人間関係がギスギスしたりモチベーションが低下したりして、会社の業績にも影響を及ぼします。
本来は、社員一人ひとりに仕事ぶりに見合った賃金を支払い、納得してもらった上で仕事に取り組んでもらうのが望ましいわけです。そのようにしたいと、どの社長も考えています。
それにもかかわらず、仕事ぶりに見合わず高い賃金の社員が生まれてしまう理由は、ほとんどが次の3つのいずれかに該当します。
1.前職の水準を保証する高い賃金で中途社員を採用したが、期待はずれだった
2.毎年全社員を昇給させているので、勤続年数の長い社員の賃金が高くなった
3.何かの仕事で成果を上げたので賃金を一気に上げたが、その後はダメだった
一度上げた賃金、特に基本給を下げることは、労働条件の不利益変更ということで、当該社員の合意が得られなければ労使紛争につながってしまう可能性があります。その際、第三者にも説明できるような合理的な根拠がなければ、ほとんど会社側が負けてしまうことになります。
また、そこまで行かないにしても、社員の給与を下げることは、相当の労力を使わざるを得ません。
その結果、なかなか下げられずに、仕事ぶりより高い賃金を支払い続けることになってしまうのです。
この問題の根本的な原因を探ると、ほとんどは等級制度が不備であるためという結論にたどり着きます。
等級制度とは、社員の能力や仕事内容、役割に対する格付けです。その格付けによって、基本給の水準を決定することになります。例えば、等級を6つに分け、下から2番目の等級は「ルーティンワークを確実に遂行するだけでなく、イレギュラーな業務についても自立的に対応する」という役割を担い、「基本給は20万円から25万円の範囲」というふうに、それぞれの等級にはどのような社員が該当するのかを定義するのです。
等級制度をきちんと定めると、各社員の賃金額に対する基準が明確になります。
そうすると、仕事ぶりと賃金が見合っているかどうかが判断できるようになります。
前述の例で考えると、例えばルーティンワークをこなすだけで、イレギュラーな業務には全く対応できない人が25万円の賃金をもらっている場合は、
「仕事ぶりに見合っていないから賃金を下げる」
あるいは、
「25万円の賃金に見合うようにイレギュラーな業務にも対応できるようになる」
という形で、仕事ぶりと賃金のすり合わせができるようになるのです。
また、仮に賃金を下げることになっても、その根拠が明確なので当該社員を説得する労力がかなり軽減されます。
そして、仕事ぶりと賃金が見合っているかどうかの判断を、人事評価という形で行うのです。
たまに、人事評価自体は実施していても、その基準となる等級制度を定めていなかったり、定めていても人事評価と結びつかずに形骸化してしまっていたりする企業がありますが、それでは地盤を固めていない土地にビルを建てるようなもので、いずれ運用が回らなくなります。
社員一人ひとりに仕事ぶりに見合った賃金を支払うこと、そしてその基準が明確になっていることは、社員のモチベーションアップにつながります。
そして、社員が高いモチベーションをもって仕事に取り組むことは、会社の業績向上にもつながります。そのための地盤固めとして、まずは等級制度を整備するというところから始めてみませんか?
代表 樋野 昌法
((当社メルマガ2011年7月1日号コラム「士業のココロ」より転載))
Copyright 2009 TRIPLE WIN CONSULTING All Rights Reserved. Produced by ArtySite