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コラム

人事制度構築コンサルティング

なぜ人事制度を整備しなければならないのか

今日は、「そもそもなぜ人事制度(特に等級、人事評価、報酬に関する制度)を整備しなければならないのか」ということを述べたいと思います。

人事制度を整備する理由を一言で表せば、表現の仕方はいろいろあるものの、「仕事ぶりをきちんと評価し、評価に応じた賃金を支払うようにすることで、社員のモチベーションアップや能力開発を図り、会社を継続的に発展させていくため」ということになると思います。

しかし、これまで人事制度構築のお手伝いをした企業を振り返ってみると、もともと人事制度が存在している企業と、存在していない企業では、状況が異なることに気がつきました。

仕事ぶりをきちんと評価し、評価に応じた賃金を支払うようにすれば、社員のモチベーションアップにつながるというのは、主にもともと人事制度が存在している企業の場合です。

具体的には、人事制度自体は存在しているが、作られてから時間が経っており、現在の会社の状況とマッチしていないような場合です。

歴史ある企業で、年功主義あるいは能力主義を採用しているケースが該当します。そういった企業の社員にインタビューすると、「先輩社員よりも自分の方が仕事をしているのに給料が低い」といった不満がよく出てきます(中には単に本人の自己評価が甘いだけというケースもありますが)。

このような企業の場合は、人事制度を現在の経営環境に合わせて整備しなおすことで、「仕事ぶりをきちんと評価し、評価に応じた賃金を支払う」ようにすることができ、社員のモチベーションアップにつながります。

しかし、もともと人事制度が存在していない企業では、新たに人事制度を整備することで、初めて「仕事ぶりをきちんと評価し、評価に応じた賃金を支払う」ようになるというケースは少ないように思います。

もともと人事制度が存在していない企業というのは、現社長が創業者で株主のオーナー企業であることがほとんどです。そういったオーナー企業では、社長の強力なリーダーシップの下、仕事ぶりによってダイナミックに賃金を変動させており、結果として「仕事ぶりをきちんと評価し、評価に応じた賃金を支払う」ことが、すでに実現されていることが多いのです。

そのため、オーナー企業の社長に対して、「人事制度を整備することによって、仕事ぶりをきちんと評価し、評価に応じた賃金を支払うようにできます」などと言ったとしても、「ウチは別に人事制度がなくてもできているよ」と返答されるのがオチです。

では、そのような企業でも、きちんと人事制度を整備すべき理由は何でしょうか。

それは、“結果として”仕事ぶりに応じた評価や賃金が実現されているとしても、社員のモチベーションアップにはつながらないことが多いからです。

モチベーションアップには、「仕事ぶりに応じた評価や賃金を実現すること」だけでなく、「その決定プロセスが明示されていて、自分が頑張ったら将来的に満足のいく処遇が期待できるということをある程度予想できる」状態になっていることが重要なのです。このことを、L.W.ポーターと E.E.ローラーの2人は、期待理論の中で唱えています。

つまり、人事制度がないオーナー企業の場合、それまで社長の頭の中だけにあった人事評価や賃金決定のルールを可視化することで、自分が頑張ったら将来的に満足のいく処遇が期待できるということを各社員に認識してもらうことが、人事制度を整備する最も大きな理由になります。

実際に、人事制度整備のコンサルティングにおいて、制度がだんだんと出来上がっていくにつれて、社員の方のモチベーションがみるみる高まっていくのを実感します。

人事制度の整備が不十分だという企業の社長には、社員のモチベーションアップと企業の発展のために、是非人事制度を整備することをおすすめします。

社会保険労務士事務所トリプルウィン

代表 樋野 昌法


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