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厚生年金の標準報酬月額、上限引き上げ検討について

厚生労働省は、厚生年金保険について、保険料の算定基準となる標準報酬月額の上限を引き上げる方向で検討に入りました。

厚生年金保険料は、標準報酬月額に保険料率(一般の被保険者は16.412%)を掛けて算出されます。厚生年金保険の標準報酬月額の現在の上限は62万円で、保険料は101,754円。これを事業主と会社が折半していますので、それぞれ約59,000円の保険料を支払っている形となっています。

今回の検討では、厚生年金保険の標準報酬月額を、健康保険の標準報酬月額の上限と同じ121万円とする案が有力とのことです。

そうなった場合、保険料は約198,600円、折半額が約99,300円となります。給料が62万円以上の人は最大で月4万円の負担増になります。また、被保険者本人だけでなく会社の負担も同額増えます。

現在の厚生年金の計算方法では、厚生年金保険料の支払いが増えれば老齢年金の額も増えるということになります。

しかし、今回は、徴収する保険料は引き上げても老齢年金は抑制するという方向で検討されるようです。これは、厚生年金給付の計算の根幹である報酬比例という考え方に矛盾するものであり、被保険者の反発は免れられません。

高収入の人や企業は負担が増えてもやむを得ないという考え方もありますが、そうであれば、社会保険という形ではなく、税金を財源とする社会保障に移行すべきだと思います。

すでに、国民共通である国民年金の給付の2分の1は国庫負担、つまり税金が投入されています。また、厚生年金保険から国民年金に回す拠出金についても、被保険者から集めた保険料からは2分の1で、残り2分の1は国庫負担となっています。

もはや保険という形では年金制度が成り立たないにもかかわらず、雑巾を絞るようにして何とか保険料を徴収し、わずかの期間だけでも体裁を整えようとしている状態です。

以前にも書きましたが、年金は国民年金に一本化し、税方式に変更して全国民から広く薄く徴収するしか、抜本的な解決はできないのではないかと思います。

社会保険労務士事務所トリプルウィン

代表 樋野 昌法
(当社メルマガ2011年11月1日号コラム「士業のココロ」より転載)


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