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メンタルヘルス不調者が出たらどう対応するか

近年、メンタルヘルスの問題が増加しています。
労働安全衛生基本調査(厚生労働省)によると、メンタルヘルス上の理由により連続1か月以上休業した労働者がいる事業所の割合は、平成17年度2.6%、平成22年度5.9%と上昇しています。

メンタルヘルスの問題が発生するのを防ぐためには、日頃からメンタルヘルスケアに取り組むことが必要です。ただし、そうした取り組みを行っていても、ある日突然、メンタルヘルス不調者が出る可能性は、どの企業にもあります。

大企業なら、長期的な休職で治療に専念させたり、配置転換等で業務負担の軽い職務に変更したりすることが可能かもしれませんが、中小企業ではそのような対応は困難です。

今回は、中小企業でメンタルヘルス不調者が出た場合の対応について、書きたいと思います。

基本的な流れとしては、まず休職してもらい、休職期間終了時に治癒すれば復職、治癒しなければ退職、ということになります。

ただし、スムーズに進まないケースが多くあります。具体的には以下のような形です。

1.本人が休職しようとしない。
2.休職が長期に及んで復職できない。
3.復職後も無断欠勤をするなど、業務に支障をきたす。
4.以前のように働くことができない状態だが、退職も拒む。

このときに無理やり休職や退職をさせようとすると、問題が余計にこじれてしまいます。

こうした事態に陥らないようにするためには、まず就業規則にメンタルヘルス不調者が出た場合を想定した以下の条項を記載しておかなければなりません。

1.休職に関する事項(特に休職の最大期間と、休職期間の通算のルール。中小企業では休職期間は長くても6ヶ月が妥当)
2.休職期間中の賃金に関する事項(休職中は無給。社会保険料本人負担分は、会社に振込んでもらう)
3.解雇に関する事項(解雇事由の1つに、精神に支障があって業務に耐えられないと認められたときを記載)

以上の就業規則を前提として、以下のように進めます。進めるうえで、以下のポイントを念頭に置いて下さい。

1.本人への叱責は厳禁。本人の人格を尊重していることを常に表すことが重要。ただし、会社として
  は規則に従って対応せざるを得ないことを伝える。
2.必ず医師の診断を受けさせる。
3.解決までに時間を要することを覚悟し、じっくり取り組む。


では、実際に手順を示します。

1.現在の状態では、就業規則の解雇事由に該当すると判断せざるを得ないことを伝える。

2.ただし、解雇は避けたいので、医者による治療を受け、完全に治るまで休職してはどうかと勧める。
休職期間は休職を取れる最長限度が望ましい。勤続1年以上経っている場合は、休職中、傷病手当金が申請できるので、現在の給与の3分の2は出ることを伝え、生活面の不安を取り除く。

(1)上記説明で休職を受け入れた場合

以下のことを伝える。

ア)休職期間が終わっても治癒せず、復帰できなかったり、復帰しても就業困難に陥った場合は、就業
  規則上、どうしても退職してもらわざるを得ないこと
イ)治癒せずに復帰できず、退職になった場合は、退職後も傷病手当金を受給することが可能なこと
  (在籍中も含めて最大で1年6ヶ月分受給可能)
ウ)休職中の社会保険料本人負担分は、毎月会社宛に振り込んでもらう必要があること
エ)傷病手当金の申請のために、毎月、医師の診断書を提出してもらう必要があること

(2)上記説明で休職を拒んだ場合

自主退職を勧める。その際に、以下のことを伝える。

ア)病気による退職扱いとするので、治癒後、休職することになったときには、通常の自己都合退職と異なり、雇用保険の失業等給付の給付制限3ヶ月なしで失業手当を受給できる。
イ)3日以上会社を休ませ、傷病手当金の申請をする(ご本人の勤続期間が1年以上の場合)。退職後も、最大で1年6ヶ月分は受給可能である旨を伝え、生活面の不安を取り除く。

(3)休職も自主退職も拒み、あくまで働くという場合

再び就業困難に陥った場合は、就業規則上、どうしても退職してもらわざるを得ないことを伝え、通常通り働いてもらう。この場合は、勤務中の本人の動向を常に把握する必要がある。業務に支障が生じたら、やはり勤務は無理であることを説得し、規則上どうしても退職してもらわざるを得ないということを伝え、退職してもらう。

以上の流れで、休職させれば、その後の復職または退職の手続きがスムーズになります。きちんと医師にかかって、治療すれば、復帰後元通り業務が遂行できるケースも多いです。あくまで本人を最大限尊重して、対応することが大切だと思います。


社会保険労務士事務所トリプルウィン

代表 樋野 昌法
((当社メルマガ2011年9月15日号コラム「士業のココロ」より転載))


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