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新年あけましておめでとうございます。
昨年は、労働者派遣法、労働契約法、高年齢者雇用安定法が改正され、「派遣労働よりも直接雇用に」「有期雇用(契約社員やパートタイマー)よりも継続雇用(正社員)に」「原則的に全員65歳まで働ける制度に」といった方向性がより明確に打ち出されました。いずれも人材を企業に長期固定化して、雇用を安定させようというものです。
私としてはこうした規制強化にはウンザリで、「もっと規制を緩和して、企業(経営者)が伸び伸びと活動できるようにしてほしい」と思います。これだけ経済環境の変化が激しく、かつグローバルな競争が行われている時代に、規制を強化して日本国内の労働市場を固定化しようとしても、雇用の安定にはつながらないと思うからです。業績低迷にあえぐ企業に雇用の義務だけを押し付けても、さらに業績が厳しくなるだけです。そして、企業を倒産させないために、助成金や制度融資などの問題先送りの対応が行われることになり、結局私たち国民の負担を増やすことにつながります。
時代は、「長期」「固定」「安定」から「短期」「流動」「不安定」へと確実にシフトしており、いくら規制で縛ろうとしても、その流れを止めることは困難です。したがって、労働市場についても「短期」「流動」「不安定」に対応させる必要があると思います。つまり、企業側にとっては、短期的な人材調達や人員の入れ替え、リストラがもっと自由に行えるようにするということです。一方、労働者側にとっては、派遣労働や有期雇用(契約社員やパートタイマー)だけでなく、正社員の場合でもいつ解雇されるか分からないという不安定な雇用状況になるということです。
そんなことをしたら雇用不安で大混乱に陥るので非現実的だという意見が多いと思いますが、果たして本当にそうでしょうか。
よく言われるように、人材が企業に固定化することは、衰退産業から成長産業への人材のシフトを妨げます。また、やる気も能力もない人が企業内に留まってしまうため、やる気や能力のある外部の人材を登用する機会が生まれにくいという面もあります。
もし、短期的な人材調達や人員の入れ替え、リストラを企業がもっと自由に行える環境が整った場合、労働者側は職を失う可能性が高くなる一方で、新たな職に就ける機会も増えることになります。正社員の地位にあぐらをかいている人にとっては厳しい状況になりますが、努力する人が報われやすい社会になります。
また、衰退産業から成長産業への人材のシフトがスムーズになり、国内産業の競争力が向上します。さらに、雇用面で企業の自由度が増すことは、事業環境としての魅力度が高まることにつながり、企業の海外流出を防ぐとともに、外資系企業の日本進出を促進する1つの要因になり得ます。
こうして企業が活動しやすい環境を整備することによって、競争力のある企業が多く生まれれば、自然と人材に対するニーズは増加します。人材に対するニーズが増加すれば、企業は人材を確保するために、働く人にとって魅力ある雇用環境を提供しようとするはずです。
その結果、派遣社員ではなく直接雇用で人材を確保したり、有期雇用(契約社員やパートタイマーではなく継続雇用(正社員)で人材を確保したり、あるいは全員65歳まで働ける制度にする企業が出るでしょう。規制によってそれを無理に実現しようとするより、各企業が自由に判断した結果としてそうなる方が、私はいいと思います。
これからは、「短期」「流動」「不安定」の時代を前提として、企業が活動しやすい環境を実現できるような労働関係法の整備を望みたいと思います。
代表 樋野 昌法(社会保険労務士・中小企業診断士)
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